知っておきたい身近な移民法
米国移民法を専門とする琴河・五十畑法律事務所 (K&I Lawyers) の五十畑諭弁護士が、アメリカに滞在するで知っておくべき移民法について解説します。
本コラムで提供される情報は一般的かつ教育的なものであり、個別の解決策や法的アドバイスではありません。また、情報は掲載時点のものです。具体的な状況については、米国移民法の弁護士にご相談ください。
婚約者ビザ? それともグリーンカード?
自分の状況に合う選択を
結婚を予定している国際カップルが、アメリカで新婚生活をスタートする前に直面するのがビザの問題です。中でも質問が多く寄せられるのが、婚約者ビザ(K-1ビザ)またはグリーンカード(米国永住権)のどちらを選択すべきかという点です。
どちらを申請するのが適切か、それは申請者の状況や目的によって異なります。どちらも可能なケースもありますし、どちらか一方のオプションしかないケースも存在します。今回は、判断の決め手となる主なポイントをご紹介しましょう。
なお、ここでは「国際カップルのうち外国人がアメリカ国外にいること」を前提とします。たとえば、日本人、アメリカ人の国際カップルで、日本にいる日本人と、アメリカにいるアメリカ人が結婚する場合、またはふたりとも日本にいて結婚する場合などです。米国内で行うアジャストメント申請ではなく、米国外の大使館、領事館で手続きするケースを想定しています。
●スポンサーのステータス
婚約者ビザのスポンサーは米国市民でなければならないため、スポンサーがグリーンカード保持者である場合、婚約者ビザは申請できません。
●すでに結婚している場合
婚約者ビザは婚約していることが前提なので、すでに結婚している場合、婚約者ビザのオプションはありません。
●米国入国後のプロセス
グリーンカード申請の利点のひとつに、外国人配偶者がアメリカに永住者として入国できることが挙げられます。婚約者ビザの場合、婚約者として入国後に結婚し、アジャストメント申請を経て永住者となるので、入国後にグリーンカードを取得する追加手続きが必要です。
●審査期間
実際にグリーンカードを取得するのに時間がかかることになっても、一刻も早くアメリカに入国したい場合、パンデミック前までは婚約者ビザ申請を選択する方が多くいました。しかし、ここ3年は婚約者ビザの審査期間も長くなる傾向にあり、今ではグリーンカード申請とさほど変わりません。
●結婚準備
グリーンカード申請の場合、いつ、どこで結婚するかをまず考えなければなりません。たとえば、国際カップルのうちアメリカ人がアメリカにいて、日本で日本人と結婚するケースでは、段取りに時間がかかることが多いようです。旅程を組み、仕事のスケジュール調整や、アメリカ人家族の式参加の確認などをしているうちに、時間のロスが発生します。 そこで、婚約者ビザを申請し、審査期間中にゆっくり式の計画を立てることを選択する国際カップルもいます。ただし、この場合でも審査期間など明確には予測できない部分があるので、フレキシブルな対応が求められます。
●外国人配偶者に連れ子がいる
国際カップルの外国人に連れ子がいて、子どもも一緒に渡米したい場合、子どもの年齢が重要になります。グリーンカードは、結婚成立時に子どもが未婚で18歳未満であれば、スポンサーの継子として申請できます。婚約者ビザは、未婚で21歳未満の子どもを親の扶養家族として申請に付随することが可能です。
たとえば、親の結婚時に、外国人配偶者の連れ子が未婚で19歳の場合、スポンサーの継子としてグリーンカードを申請することはできませんが、スポンサーがアメリカ人であれば、親の婚約者ビザに扶養家族として付随できます。ただし、この場合は、親が結婚前の婚約状態にあることが条件です。
このほか、各申請にかかる費用なども考慮すべきでしょう。家族構成や申請カテゴリによって異なりますが、一緒に永住を希望する子どもがいない外国人1人をスポンサーする場合、グリーンカード申請のほうがプロセスの少ない分、コストを抑えることができます。