知っておきたい身近な移民法
米国移民法を専門とする琴河・五十畑法律事務所 (K&I Lawyers) の五十畑諭弁護士が、アメリカに滞在するで知っておくべき移民法について解説します。
本コラムで提供される情報は一般的かつ教育的なものであり、個別の解決策や法的アドバイスではありません。また、情報は掲載時点のものです。具体的な状況については、米国移民法の弁護士にご相談ください。
ビザとステータスの違い
パンデミック宣言前は頻繁に出入国を繰り返していたものの、入国制限や感染防止などを理由に、アメリカ国内にとどまっている方は多いことでしょう。あるいは、入国制限が緩和される傾向にある今、海外渡航を予定する方もいるかもしれません。そこで今回は、ビザ(査証)とステータスの違いについてお話しします。
ビザとは、外国への渡航を許可するための査証・入国書類のことです。アメリカに渡航する外国人は、事前に米国大使館・領事館にて、渡航目的に沿ったビザを申請します。申請者がその目的のためにアメリカに入国する基準を満たしていれば、ビザが発給されます。なお、日本人の場合、観光や商用(就労ではない)が目的で、アメリカでの滞在が90日未満の場合、ビザ免除プログラムを利用できるため、ビザは必要ありません。
ビザが発給されたら自動的に入国が許可されると考えている方も多いようですが、空港や国境など通関手続き地の入国審査で入国が拒否される場合もあります。ビザ審査が国務省の管轄である一方、入国審査に関しては国土安全保障省が権限を持ちます。
入国審査で入国が許可された外国人には、ステータスが与えられます。ステータスとは、アメリカでの在留資格のことで、米国大使館・領事館で発給されたビザの種類と同じです。たとえば、E-1ビザ保持者には、E-1ステータスが与えられます。
なお、以前は入国時に出入国記録カード(I-94 Arrival/Departure Form)が発行され、このI-94にアメリカ滞在が可能な有効期限が記載されていました。現在は基本的に、渡航者の出入国の情報は電子的に記録されます。渡航者は、米国税関・国境警備局(CBP:US Customs and Border Protection)の公式サイトから自身の渡航歴や、滞在資格、滞在の有効期限を確認できます。
ビザは入国時に必要な書類のため、ビザ保持者がアメリカに合法的に滞在できる期間とは直接的な関係はありません。したがって、入国後にビザの有効期限が切れても、入国が許可されたビザの条件を守っていることを前提として、ステータスの有効期限内は合法的なアメリカ滞在が可能となります。このことからもわかるように、入国後、重要なのはステータスの有効期限です。これを見落とすと、大きな問題につながる可能性がありますので、入国ごとに有効期限を確認すると良いでしょう。
許可された滞在期間を過ぎてアメリカに滞在している状態のことをオーバーステイ(不法滞在)と言います。180日以上、1年未満オーバーステイをした外国人は、出国後3年間はアメリカに再入国できません。また、オーバーステイが1年を超えた場合は、出国後10年間はアメリカに再入国できなくなります。ただし、18歳未満の子どもなどは該当せず、そのほかにも状況によっては罰則を免除されるケースがあります。
見落としやすい状況について例を挙げてご説明します。
オーバーステイに注意!
●日本国籍のEビザ保持者は、通常5年間有効なビザを発給してもらえますが、入国ごとに許可されるステータスは2年間です。前述の通り、ビザは入国時に必要な書類のため、ビザ保持者がアメリカで合法的に滞在可能な期間とは関係ありません。また、ビザの有効期限とステータスの有効期限は必ず同じとは限りません。重要なのはステータスの有効期限です。
●H-1Bビザ保持者が最新の認可通知を提示せずに入国審査を受けた場合、延長された就労期間ではなく、ビザの有効期限に合わせて滞在期間が短くされてしまう可能性があります。
●パスポートの有効期限が短い場合、許可される滞在期間がパスポートの有効期限に合わせて短くなることも考えられます。
●入国審査官の間違いで、有効期限を短くされてしまうケースも見受けられます。
明らかな間違いの場合は、入国後に訂正してもらうことは可能ですが、このような状況を回避するためにも、入国審査のエリアを離れる前に滞在期間を確認することをおすすめします。すでに入国審査を終えて空港から去ってしまっている場合でも、すぐにCBPの公式サイトから滞在有効期限を確認しましょう。万一、この時点で間違いを発見した場合、「Deferred Inspection」と呼ばれるCBPのオフィスにて後日訂正してもらえます。