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科学性よりもアクション Star Trek Beyond

『Star Trek Beyond』
(邦題『スター・トレック Beyond』)

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©Paramount Pictures

シリーズ13作目、09年のリブート以来3作目に当たる本作。監督が人気復活を果たした立役者J・J・エイブラムズから、ジャスティン・リンへとバトンタッチされ、前2作とは違う作品に変貌していた。
カーク艦長( クリス・パイン)率いるU.S.S.エンタープライズ号は、宇宙の人工巨大都市ヨークタウンで上陸休暇を取っていた。そんな艦長の元に星雲に閉じ込めらた仲間を助けて欲しいという生存者が現れ、カークらは救助に向かう。ところが、星雲に近づくと群れをなす戦艦から猛攻撃を受け、エンタープライズ号は破壊され、近くの惑星に墜落。ウフーラ(ゾーイ・サルダナ)とスールー(ジョン・チョー)ら多くの乗組員は謎のエイリアンの捕虜となり、惑星に不時着した艦長スコッティ(サイモン・ペグ)、副艦長スポック(ザカリー・クイント)、医師マッコイ(カール・アーバン)らは互いを探し、惑星から全員脱出の道を探る。
米では66年からTVで放映が始まり、トレッキーと呼ばれる熱烈なファンを生んできたシリーズ。人気の秘密はNASAに考証を依頼するほどの科学性、近未来性など織り込んだ凝った内容だろう。本シリーズで宇宙への夢を広げた団塊世代も多かったはずで、50年を経た今でも新たなファンを掴み続けている傑作SFドラマだ。反面、宇宙科学や天体物理学などに関心の薄い層にはやや難解、『スター・ウォーズ』などと比べると天体オタク好みという側面もあった。その問題点を打開して、誰にでも楽しめる作品にという狙いで製作されたのが本作で、脚本もロベルト・オーチーらからサイモン・ペグらに変わり、コミカルで科学性よりも宇宙での攻防アクションをスピーディに見せる作品となっている。
『ワイルド・スピード』シリーズでアクションの演出に冴えをみせたリン監督らしく、特撮を駆使した宇宙での攻防戦は切れが良く、見応えたっぷり。大画面でみるヨークタウンの壮大さを捉えた映像には、未来世界への夢を掻き立てるものがあった。だが、トレッキーたちはどう受け止めただろう。「これでは『アベンジャーズ』『Xメン』シリーズとどこが違う?」という声も聞こえてきそう。科学性の希薄な『スター・トレック』は『スター・トレック』と言えないのかもしれない。

上映時間:2時間。シアトルはシネコン等でIMAX 3D、3D、2D各バージョンで上映中。

[新作ムービー]

映画ライター。2013年にハワイに移住。映画館が2つしかない田舎暮らしなので、映画はオンライン視聴が多く、ありがたいような、寂しいような心境。写生グループに参加し、うねる波や大きな空と雲、雄大な山をスケッチする日々にハワイの醍醐味を味わっている。