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備えて安心、元気な暮らし〜シアトルの知恵ノート

知恵ノート

知っておくと暮らしが豊かになるヒントを、シアトルで活躍するさまざまな専門家の方に聞きます。

備えて安心、元気な暮らし

年齢を重ねても、住み慣れた場所で元気に過ごしたい—そう願う人は多いものです。けれども、病気やケガはある日突然やってきます。「もっと早く知っていれば」と後悔する前に、今から少しずつ備えておきませんか? 今回は、高齢者の方々をサポートする中で私が学んだ「安心して暮らすためのコツ」をご紹介します。

愛ちゃんと生活サポート

イム 田宮 愛 ■リハビリスタッフ(ST)として日米の医療介護の現場に長年携わる。退院後の生活支援やお見取りの経験から、人生の最終章に寄り添う支援の大切さを実感。一人暮らし、老老介護、身寄りのない方への支援に加え、介護者や後見人が安心して責任を果たせるようサポートするため、2024年にAi Chanto Seikatsu Support, LLCを設立。「穏やかな暮らしのコンシェルジュ」として活動中。

Ai Chanto Seikatsu Support, LLC (Redmond, WA)

☎︎310-754-9172(テキスト対応可)、info@aichanto.com
www.aichanto.com

押さえておきたい、安心のための4つのポイント

1. 健康管理は何より大切 健康は元気に暮らすための基本です。ちょっとした体調の変化にも気づけるよう、日ごろから自分の体と向き合う習慣を持つことが大切です。アメリカでは医療費が高額なため、受診を先延ばしにすると治療が遅れ、かえって費用がかさむこともあります。特に高齢者は入院をきっかけに体力や筋力が低下し、精神的な負担も大きくなりがちです。軽い症状のうちにかかりつけ医に相談することで、症状の悪化を防ぎ、救急外来や入院を避けられることもあります。

転倒や誤嚥ごえんにも注意が必要です。室内の段差をなくす、手すりを設置するなど環境を整えることで、事故のリスクを減らせます。また、食材の固さや大きさ、調理法を工夫することで、誤嚥のリスクを軽減することも可能です。健康を維持するには、適度な運動とバランスの取れた食事が欠かせません。宅配サービスや手軽に食べられる食品も上手に取り入れ、無理なく栄養を確保しましょう。

また、物忘れが気になったときには、早めに神経内科の受診をおすすめします。加齢によるものか、今後サポートが必要になる兆候かを知ることで、適切な対応ができます。予約は早めに済ませておくと安心です。

2.入院に備える

アメリカでは入院期間が比較的短いため、退院後の生活をあらかじめ想定しておくことが大切です。

入院前に備えておきたいこと
● 必要書類の整理:保険情報、かかりつけ医、服薬リスト、緊急連絡先をまとめる
● POLST(医師による生命維持治療指示)の確認:延命治療の希望を家族や信頼できる人と共有しておく
● 入院から退院までの流れを把握:保険でカバーされる入院期間や退院後に利用できるサービスを事前に確認する

多くの高齢者にとって、入退院は「通過点」にすぎません。退院後に支援が必要になるケースも多いため、転院先や訪問医療、介護サービスの利用も視野に入れて早めに情報を集めておきましょう。

3.スマートフォンを味方に

スマートフォンを活用することで、日常生活はより便利で安全なものになります。人との直接的な交流はもちろん大切ですが、行政手続きや買い物などはオンラインを使えば時間の節約になり担も軽くなります。何より、万が一のときや外出先で困ったときにすぐに連絡が取れることは大きな安心につながります。

便利な機能はたくさんありますが、まずは「電話をかける・受ける」「メッセージのやりとり」といった基本的な操作ができれば十分です。 画面の大きな機種を選んだり、文字サイズを調整したり、スタイラスペン(タッチペン)を使ったりと、ちょっとした工夫で操作はぐっと楽になります。スマートフォンに不慣れな方や、90代の方でも、こうした工夫があれば安心して使い始めることができます。

4. サービスを活用する

高齢者の生活を支えるサービスには、ホームヘルプサービス、訪問介護・看護、配食サービス、福祉用具のレンタルなどがあります。「人に頼るのはまだ早い」と感じる方も、まずは小さなサポートから取り入れてみましょう。中には医療保険や生命保険でカバーされるものもあるため、内容を確認しておくことが大切です。

サービスを検討するタイミングの目安
家事が負担になってきた
転倒のリスクが増えた
食事や服薬の管理が難しくなった
外出や人との交流が減ってきた

できることは今のうちに。信頼できる人と一緒に考える

人生の最終章を安心して迎えるためには、時間と準備が欠かせません。「友人に頼んであるから大丈夫」と話す人もいますが、法的な手続きがなければ、いざというときに希望通りの対応をしてもらえないことがほとんどです。元気なうちに正式な書類を整え、必要な手続きを済ませておきましょう。準備は一度きりではなく、生活環境の変化に応じて定期的に見直すことも大切です。

また、日本への帰国を考えている場合は、「一時帰国」か「本帰国」か、あるいは個人の状況によって必要な手続きが異なります。特に税務や法務に関しては複雑なため、早めに専門家に相談することをおすすめします。

高齢者が自宅で安全に暮らすには、適切な備えとサポートの活用が欠かせません。そして何よりも一人で抱え込まず、信頼できる人に相談することが理想の暮らしへの第一歩となります。「どこから始めればいいかわからない」と感じたら、まずは身近な人や専門家に話してみてください。 必要なときに頼れる人がいることは、何よりの安心につながります。今日できることから、一歩ずつ始めてみませんか?