知っておきたい身近な移民法
米国移民法を専門とする琴河・五十畑法律事務所 (K&I Lawyers) の五十畑諭弁護士が、アメリカに滞在するで知っておくべき移民法について解説します。
本コラムで提供される情報は一般的かつ教育的なものであり、個別の解決策や法的アドバイスではありません。また、情報は掲載時点のものです。具体的な状況については、米国移民法の弁護士にご相談ください。
移民局の新しい申請料金体系
2024年4月1日から移民局の申請料金体系が変わりました。移民局はこの変更について「運用コストをカバーし、また、将来的な申請のバックログを回避するために必要」と説明しています。今回はいくつか例を挙げてお話します。
大半の申請において申請料金は値上がりましたが、以下の通り、値下がりした申請もあります。また、同じ申請であっても個々の状況によって料金が異なる場合がありますので、注意が必要です。
個々の申請料金に関しては、国土安全保障省の公式サイトに掲載されています(www.uscis.gov/sites/default/files/document/forms/g-1055.pdf)。
●申請料金の変更と申請書の改訂
申請料金の変更に伴い申請書が改訂されていますが、大半の申請書は2024年6月2日(日)までの猶予期間内であれば以前のバージョンでも受け付けられます。しかし、非移民就労ビザを申請する際に必要なForm I-129や雇用ベース移民ビザを申請する際に必要なForm I-140など一部の申請には猶予期間が与えられていません。申請の際は、申請の発行日(Edition Date)を確認する必要があります。
●申請方法による料金の違い
申請の種類によってはオンライン申請が可能です。その場合、基本的に通常の申請料から50ドルがディスカウントされます。すべての申請においてオンライン申請が可能なわけではなく、また、オンライン申請でもディスカウントが適用されない場合もあるので、申請時に確認しましょう。
たとえば、グリーンカード更新申請は郵送申請の465ドルに対して、オンライン申請の場合は415ドルになります。グリーンカード更新申請は、以前は540ドルかかっていたのに比べ料金が値下がりした申請の一例です。
同時にいくつかの申請書を提出する場合、オンライン申請が可能な申請と郵送申請しかできない申請があり、注意が必要です。
たとえばアメリカ国内で行う米国市民との結婚によるグリーンカード·アジャストメント申請は、通常Form I-130とForm I-485を同時に提出しますが、現在、オンライン申請が可能なのはForm I-130のみで、Form I-485は郵送申請のみ受け付けられています。よって、Form I-130とForm I-485を同時に提出する場合には郵送申請でなければならないため、Form I-130をオンライン申請による50ドルのディスカウントは適用されません。
また、帰化申請の申請料金は、オンライン申請の場合は710ドルですが、郵送申請の場合は760ドルです。しかし、世帯収入が連邦貧困ガイドラインの400%、または、それ以下の場合には申請料金が380ドルにディスカウントされます。ただし、現在このディスカウントを受けることができるのは郵送申請のみとなります。
●新規H-1B申請料金の大幅値上げ
新規H-1B申請は、申請料金が大幅に値上げされました。まず、H-1B抽選登録料金は10ドルから215ドルになりました。また、基本申請料金が郵送申請の場合は780ドルに、オンライン申請の場合は730ドルに値上がりしました。しかし、小規模な雇用主や非営利団体の申請料金は460ドルのままです。
このほかに、不正防止申請料金が500ドル、ACWIAと呼ばれる申請料金が社員数によって750ドルまたは1500ドル(該当する場合のみ)、Public Law 114-113と呼ばれる申請料金が4000ドル(該当する場合にのみ)が基本申請料金に加算されるのはこれまで通りです。
さらに4月1日から新たに加わったのがAsylum Program Feeと呼ばれる費用です。亡命難民申請のコストをカバーするもので通常600ドルですが、小規模な雇用主の場合は300ドル、非営利団体の場合は免除されます。プレミアム·プロセスを利用する場合は、2805ドルが加算されます。
このように新申請料金体系はケースによっては複雑ですので、申請料金に間違いがないように確認する必要があります。
申請料金の支払い方法は、オンライン申請の場合、クレジットカードまたは銀行引き落としが可能です。郵送申請の場合は、クレジットカードまたはチェックでの支払いが可能です。チェックの宛先はUS Department of Homeland Security です。
参考文献
■移民局
www.uscis.gov