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患者力 ~女性の命を守るヘルスケア Vol.3

女性の命を守るヘルスケア Vol.3

アメリカ生活中に乳がん、卵巣がん、子宮がんを経験する患者の心に寄り添い、悩める女性たちをサポートするSHARE 日本語プログラムによる寄稿シリーズ。現在のアメリカの医療制度で今、日本人の私たちができることを探ります。

第3回 患者力

アメリカでは患者が医師を訴えることは、残念ながらよくある話です。テレビでは弁護士たちが「けがをしたのはあなたのせいではない」「悪い空気を吸って病気になったのはあなたのせいではない」と宣伝をしています。裁判で勝ったとしても、けがや病気が治るわけではありません。全ては医師のせいなのでしょうか? 実際に病気から自分を守るのに必要なのは「患者力」だと考えます。

患者力とは、病気を医者任せにせずに自分のこととして受け止め、自分の病気に対する理解と知識を得たうえで医師とコミュニケーションを十分に取って治療に向かうという、患者としての心持ちのことです。まずできることは何かと考えた時、ひとつには、「周りの言葉に惑わされないようにする」ということがあると思います。病気がわかると、インターネットなどで自分と同じ症状に当てはまるケースを検索したくなるもの。その人がどのような生活を強いられているかなども気になるところです。自分を待ち受けているかもしれない最悪の状況を知り、自分はそれをどう乗り越えられるだろうか……などと不安を募らせます。しかし、世の中には最悪の状況にある人ばかりではなく、同じ診断を受けても、快適に生活をしている人や、それをきっかけに新しい人生を見つけた人がいることにも気付くはずです。治療の選択をする時に、今までの自分はどのように物事を決めていたかを振り返ることで、自分が選択をする時のパターンが見えてくることもあるかと思います。ネガティブなことを考えがちな方は、ネット検索をやめることも、不安を軽減することにつながります。

また、人に選んでもらった道を歩く、周りがみんなそうするから自分もするという選択の方法を取ってきた人は、病気になった時も医師任せになってしまいがちです。「先生を信じていたのに……」と、医師を責めても、病気と戦うのは結局自分なのです。まずは私たちひとりひとりが、自分のガイドラインを設定する必要があります。たとえば、がんの場合など、勧められた化学治療をせずに自然治療に頼るのも、自分のガイドラインで決めるということ。それには、自分であらゆる選択肢を明確に理解してから決断しなければなりません。薬を投与されることを恐れるあまり、自然療法を選ぶ人もいるのではないでしょうか。薬を投与されると死んでしまうと思われるのでしょうが、私は薬を投与しないで亡くなってしまった方を何人も見てきました。容態が改善しないことに気付いた時、そういう方たちが決まって発する言葉があります。

「もう少し早く気付いていれば……」

このような言葉は往々にして医師の勧める治療法を避けてきた人が言うものです。気付いてはいるものの、正面から受け入れる勇気がなかった自分を責めているとしか思えず、かける言葉もありません。残念ながら完璧な治療法はないのが現状です。あなたにとって何がベストなのかをよく考え、治療法を選択すべきではないでしょうか。勇気を持って自分でガイドラインを引かなければ、自分の弱みにつけ込んだ治療法の上手なうたい文句に誘われるまま、自分の命の舵まで取られてしまうのです。

この数年で、今までにはなかった数多くの新薬が生まれ、それと共に、がんと診断されても患者が生き残れる時代になりました。さらに最近は、ホリスティックを含めた統合医療(Integrative Medicine)完備の病院も出てきました。統合医療は通常の化学療法に加え、漢方、鍼灸、マッサージヨガ、食事療法、ホメオパシー、アロマテラピーなども取り入れ、副作用の緩和や患者の生活の質を向上させることを目的としています。これらの統合医療と呼ばれる分野にも保険が適用されるようになってきています。これからもっと身近になり、誰もが利用できるように普及して欲しいものです。

よく考えることをせず、感情に流されて治療を選択することは、自分自身にとって無責任な結果を引き起こしかねません。医師は「患者はすでにわかっているもの」と思い込み、詳しい説明をしない場合もあります。患者力を持ち、医師に面倒な患者と思われるくらい、いろいろな質問をする患者になってください。与えられた選択肢の中から冷静に選んだ治療を行った結果であれば、後悔することもなく、「自分はできるだけのことをした」と思えるのではないでしょうか。

 

SHARE 日本語プログラム

ヘルプライン:☎347-220-1110(月~金6am~2pm)

問い合わせ・患者サポートミーティング申し込み:​admin@sharejp.org

詳細:https://sharejp.org

1976年にニューヨークでスタートした非営利団体のSHAREキャンサー・サポートが母体。同団体の正式日本語プログラムとして、アメリカで暮らす日本人、日系人の乳がん、卵巣がん、子宮がん患者およびその家族の精神的不安を取り除くためのピアサポートと、アメリカの最新医療事情を日本語で提供する。

1976年にニューヨークでスタートした非営利団体のSHAREキャンサー・サポートが母体。同団体の正式日本語プログラムとして、アメリカで暮らす日本人、日系人の乳がん、卵巣がん、子宮がん患者およびその家族の精神的不安を取り除くためのピアサポートと、アメリカの最新医療事情を日本語で提供する。