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2021年概況・基礎知識 ~ シアトル不動産情報2021年版

2021年概況・基礎知識

宏徳エンタープライズ菅沼秀夫さんに聞く

シアトル周辺の不動産市場の最新動向と2021年の予測を教えて!

近年の売り手市場がコロナ禍でも続いています。パンデミックの経済影響を軽減するために出されている低金利策を背景に、このタイミングで新たに家を買おうという方が非常に多いのですが、売り物件自体は少なく、需要に追い付いていない状況です。数十件のオファーが入り、提示価格の15〜20%増しで売却される物件も少なくありません。5、6カ月で売り切れるほどの物件がマーケットに残っている状況が通常と言われますが、2021年1月のレポートでは0.75カ月とあり、パンデミックが始まる昨年1月の1.54カ月と比べても、マーケットに残っている物件が少ないとわかります。このまま売り物件が増えなければ、不動産価格はさらに上がっていく見込みです。売り物件が少ない背景としては、持ち家のある世帯があえてこの時期に引っ越しをしたがらないというコロナ禍ならではの理由があるようです。家を買い替えるよりも、自宅で長く過ごす時間を生かし、現在の家をDIYでリモデルしようという志向も高まっています。

コンテンポラリーなデザインの一軒家も近年のトレンド2020年販売スマートホームで光熱費も低く抑えられる機能性が付いた物件も多い

ここ最近で人気となっている物件の種類としては、郊外の広くてベッドルーム数の多いタイプが挙げられます。東はノースベンドやスノコルミー方面、南はメープルバレーやブラックダイヤモンド方面まで、需要のあるエリアがより遠くまで延びています。たとえばイーストサイドでは、ベルビューの中心部にコンドミニアムを購入するよりも同程度の予算でイサクアでタウンハウス、ノースベンドで一軒家を購入という具合です。リモートワークで通勤時間を気にしなくて良くなったことが背景にあると思われます。逆に、ダウンタウンの1ベッドルームのコンドミニアムなどは売り物件が増えています。賃貸物件も同じような傾向で、シアトル中心部の1ベッドルームよりも、レドモンドの2ベッドルームのほうに借り手がつきやすくなっています。パンデミック後もこの傾向が続くかどうかは、地域の大手企業の通勤体制次第でしょう。

2021年もシアトルの不動産市場はしばらく活況が見込まれますが、パンデミックが終息へ向かうのか、世界経済がどうなっていくのか、見通しが立たないのも事実で、長期的な不安要素となっています。アマゾン社を始めとする地元IT企業の堅調など好材料も多くあり、航空産業、観光業、サービス業などパンデミックで大打撃を受けた産業がいかに回復していくかがカギになってくるはずです。

アメリカの不動産取引について、日本との違いなど知っておくべきポイントは?

ワシントン州を含む多くの州で、「エスクロー」と呼ばれる不動産取引の決済と登記を請け負う業者が売り手と買い手の間に入ることが義務付けられています。「アーネスト・マネー」(手付金)や頭金などの支払いはエスクローを介して買い手から売り手へ出入金され、「タイトル」と呼ばれる不動産の権利証書もエスクローを介して譲渡されます。そうした全ての登記手続きが完了し、物件引き渡しになることを「クロージング」と言います。買い手が売り手の口座へ直接入金するようなことはありません。日本にないシステムですが、売り手と買い手の間に中立なエスクローが介入することで、公平で安全な不動産取引が保たれています。

ミルクリークにある4ベッドルームの一軒家2020年売却これだけ大きな一軒家に住めるのはアメリカならではかも

売り手に発行が義務付けられているタイトルは、内容に誤りがあった場合に補償するタイトル保険もあり、買い手が住宅ローンを組む場合は、銀行が買い手にタイトル保険を義務付けるケースがほとんどです。このようなクロージングまでの一連の手続きは日本以上に煩雑と言えるかもしれません。そのため、アメリカでは買い手も売り手も不動産エージェントを介することが一般的になっています。

もうひとつ、日本との大きな違いとして加えておきたいのが、成熟した中古物件市場です。築数十年の中古物件でも建物の価値がなくならず、土地と建物の両方の価値で売却することができます。日本では築30年以上ともなると建物の価値がすっかりなくなり、土地の価値のみしか残らないというケースが多く見られますが、アメリカではそのようなことはありません。さらにリモデルやメンテナンスに投資することで、売却時の物件価値向上につながります。

日本への帰国を予定していても、不動産を購入するメリットはある?

快適に過ごせるよう管理物件のアップデートが必要な場合はリモデルのサポートも行う

シアトル在住期間にもよりますが、現在の市況を見ると購入するメリットは十分にあると思います。賃貸物件では毎月の家賃を支出していくだけですが、住宅ローンを組んで購入すれば、毎月の支払いを通して資産形成をしていくことができます。帰国時に売却することも可能ですし、賃貸に出して投資物件として残すという選択肢もあります。ただし、住所を日本へ移した後にアメリカで賃貸収入や不動産売却益を得る場合は、日本とアメリカで二重課税が発生する可能性もあるため、会計士・税理士など専門家への相談が必要です。

投資物件の管理を請け負う会社もたくさんあり、当社でも100軒ほどの物件を管理してサービスを提供しています。借り手とのコミュニケーション、家屋のメンテナンスから、ホームオーナー費や固定資産税の支払いまで行いますので、シアトル地域から離れたあとも賃貸物件として保持できます。ぜひご相談ください。

押さえておきたい!アメリカ不動産用語

モーゲージ Mortgage
住宅ローンとほぼ同意義。日本では銀行から直接に借り入れるケースが多いが、アメリカではモーゲージ・ブローカーと呼ばれる、銀行から独立したエージェントを介するケースが多い。

●エスクロー Escrow
不動産取引に関わる決済と登記を請け負うこと、またはその受託業者。ニューヨーク州などエスクローのシステムがない州では弁護士を立てることになる。

●タイトル Title
不動産の権利証書。所在地や地積、建物の築年数などの基本条件に加えて、所有権の情報が含まれ、売り主以外の地権者がいないか、抵当に入っていないか、未払いの固定資産税が残っていないかなどを証明するもの

●アーネスト・マネー Earnest Money
物件購入申し込みの際に支払う、いわゆる手付金のようなもの。法的に義務ではないが、買い手の本気度をアーネスト・マネーの金額で示すことができる。後に購入金額の一部になる。

アプレイザル Appraisal
不動産査定のこと。アプレイザーと呼ばれる不動産査定の専門家が、物件の広さや建物の状態、また市況を踏まえて物件の適正価格を割り出す。

●インスペクション Inspection
実地での家屋調査。インスペクターと呼ばれる専門家が主に建物の構造的な問題がないかをチェックする。

菅沼秀夫さん
1992年創業の宏徳エンタープライズCEO/エージェント代表として20年以上にわたりワシントン州の不動産業界に関わる。2020年全米ファイブスター・エージェント賞受賞。購入時にはモーゲージ・エージェントやインスペクターの紹介、販売時には価格付けのアドバイスやタイトル保険、ステージングの手配を含むきめ細かなサービスを提供する。「買ってからのおつきあいを大切に」をモットーに、家の修理の相談のみならずアメリカ生活全般の相談にも応じる。投資物件の売買・管理など商業部門の新会社、パシフィック・ブリッジwww.pacificbridgere.comもパートナーと共同運営。

■Kohtoku Enterprise, Inc.
☎425-644-7437
info@kohtoku.com / hsuganuma@kohtoku.com
http://kohtoku.com


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